白磁の碗に踊る4匹の龍。そのうちの一匹は、外の世界へ飛び出そうと頭を大きく動かしているかのよう。薩摩、長崎、長州を忙しく走り回っていた龍馬の荷には、いつもこの龍の碗がありました。旅先で割れた際も、割れたところを接ぎながら使い続けたとのことから、愛着もひとしお、ある意味、自分の分身のように思っていたかもしれません。維新目前の1867年、しばし滞在していた下関から単身、京都に向かう際も、妻のお龍さんに「自分の代わりだと思ってくれ」とこの碗を託しています。その半年後に、龍馬は天へと帰るのでした。またこの碗は、江戸後期の長崎で50年間だけ生産されたという幻の磁器「亀山焼」の1つであり、龍馬らが起こした「亀山社中」は、その亀山焼の跡地で生まれています。
龍馬の人生と深い縁を持つこの碗を昨年、三川内焼の名工が見事に復刻。
龍馬が愛し続けた、不思議な龍の姿を現代に甦らせました。

現代に甦った龍馬愛用の碗は、復刻を成し遂げた平戸藤祥13代目 藤本岳英氏により「望龍碗」と命名された。
価格:10万円(税抜き)

「ようやく踊る龍を捉えることができました」と語るのは、龍馬愛用の碗を復活させた藤本岳英さん。「本物の碗は山口県の長府美術館に保管されておりまして、それを見ると4匹の龍のうち、1匹の顔が3D画のように立体的になっています。これは器を焼く際、ごく稀に起こる“窯変”の仕業。偶然の産物です。これを狙って出すのは大変難しいのですが、これがないと、たとえ姿形が似ていても龍馬愛用の碗とは言えません。釉薬の配合や焼成条件、温度など、試行錯誤して6年。やっと龍を掴まえました」。さらに器自体の成形にもひと苦労されたとか。「“もうりょう碗”というこの器は、蓋が碗にピタッとはまり、そのまま持ち上げても外れないのが特徴。蓋と碗のサイズはもちろん、共に真円に成形するという難易度の高い手技が必要なんです。龍馬の愛用していた碗が非常に素晴らしく貴重であるということを、復元して改めて実感しました」

- 蓋との合わせなどが難しい「もうりょう碗」。
藤本さんはその高いロクロ技術にも挑んだ。

- 三川内焼が得意とする細かな絵付けで繊細、
かつ迫力の龍の姿を再現。
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約400年の歴史を誇る
磁器の里「三川内」

佐世保市の東側、佐賀県との県境に位置する「三川内(みかわち)」。17世紀、平戸藩松浦家の御用窯に定められてから約400年。現在も33の窯元が高度な手技を用いた白磁の器を作り続けています。匠の技が生み出す磁器の数々は、伝統的工芸品に指定されています。
三川内町
- 【アクセス】
- ハウステンボスから車で約30分
三川内焼美術館から車で25分

「五光窯」
龍馬が愛用した器「望龍碗」を復活させた340年の歴史を誇る老舗窯元。三川内皿山にある展示場では龍馬が愛用した「望龍碗」(10万円)の他、同様の龍の紋様入りの器「亀山龍」シリーズも販売。

五光窯 展示場
- 【住 所】
- 長崎県佐世保市三川内本町207
- 【電 話】
- 0956-30-8480(要予約)
- 【営業時間】
- お電話にてご確認を
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- 龍馬はなぜ、
“窯変”した器を選んだのか? - 「幕末の常識では『線はくっきり鮮やかに』が基本。この器のように釉薬が溶け出したものは失敗作扱いでした。しかし、同時期に西欧で興った“ジャポニズムブーム”では、窯変も1つのアートとして捉えていました。自由な発想と優れた美的感覚を持っていた龍馬も、同じように感じたんでしょう」
- 精密な龍の絵は、
有名な絵師の作品? - 「龍の歯まで書き込まれた、スーパーリアリズムな描写。まさに幕末に、その名をはせた「長崎派」の絵師が描いたものでしょう。幕末の「長崎派」の大家・木下逸雲も亀山焼の発展に尽くしたと言われます。その弟子が描いた作品かもしれません」
- 龍馬はどこで
亀山焼を手に入れたのか? - 「蓋の付いたこの器は、いわゆる飯碗ではなく、会席料理の“向付(むこうづけ)”に利用されていたものだと思います。龍馬が贔屓にしていた長崎の料亭・花月あたりでこれを見て『お、この器にワシがおる。これをくれんかのう』と言って貰ったのかもしれません」
- どうして蓋付きの大きな碗を
携帯したのか? - 「“向付”に利用されていたはずの器ですが、龍馬は飯碗として使ったと思います。一般的なご飯茶碗に比べ大きいですが、大柄な龍馬にはジャストサイズだったのでは。また、昔は冷えたご飯にお湯をかけ蓋をして蒸らしていました。蓋はそれに利用したのでしょう」
厚さ1mmの極薄白磁「卵殻手」
龍馬もこの器でコーヒーブレイク?
江戸の後期から明治30年にかけ、出島や海外で人気を博した三川内焼の伝統手法の1つ。その軽さはもちろん、口当たりの薄さが飲み物の味をより美味しく引き出すとも言われています。生地の製法と高度な手ロクロ技術の難しさに、三川内でも長く生産が途絶えていましたが、これも五光窯の藤本さんが苦心の末、数年前に再興。コーヒーカップをはじめ数々の商品を販売しています。


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柔らかな肌合いの白磁、繊細な筆遣いの染付けや貼り付け、透かし彫りなど高度な手技が特徴の三川内焼。伝統の技と心はそのままに、三川内では数多くの窯元が個性あふれる逸品を作り続けています。三川内を訪れたら、ぜひ多くの窯元を訪れてみてください。
散策の第一歩は三川内焼美術館から。歴史的な名品に加え、27もの窯元の作品も展示され、三川内焼の多彩な魅力を一望することができます。ここでお気に入りの作風を見つけたら、窯元が集まる皿山へ向かいましょう。
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今昔の三川内焼がずらり勢揃い
「三川内焼美術館」
「平戸焼」時代の名品を紹介するコーナーと現在活躍する27窯元の作品コーナーの2部構成。美術館の入口には現窯元のアウトレットもコーナーもあり。
- 【住 所】
- 長崎県佐世保市三川内本町343
- 【電 話】
- 0956-30-8080
- 【開館時間】
- 9:00~17:00
- 【休 館 日】
- 12月29日~1月3日
- 【アクセス】
- ハウステンボスから車で約20分

風情ある街を歩きながら窯元めぐり「三川内皿山」
町内の3つの地区で造られてきた三川内焼。中でも三川内皿山地区は16の窯元が点在。レンガの煙突をはじめ、焼き物の町ならではの風景も楽しめます。
- 【住 所】
- 長崎県佐世保市三川内町
- 【アクセス】
- ハウステンボスから車で約25分
三川内焼美術館から車で5分
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- 三川内焼はまぜんまつり5月1日(土)~5日(水)
- 三川内の各窯元で展示即売会が行われます。絵付けやろくろ体験、お茶会などのイベントもあり。
- 三川内陶器市10月8日(金)〜12日(火)
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会場は三川内焼伝統産業会館前の駐車場。通常は高価な作品もこの日だけは特別価格で販売。
抽選会なども開催予定。





